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2010年02月06日

ロリィタs Not Dead!! 21話



薔薇のベッドで乙女は眠るの
甘い香りに包まれて

まどろむ私を起こすのは誰?
アラアラそれは恋の風
そっと頬なでる恋の風
あ~~~恋の風



「・・・って!ふざけんなっ!!」

叩きつけられたルーズリーフの1ページが、力なく床をヒラヒラヒラと彷徨います。

「なんてことをするのですか?!歌詞を書いてこいって言ったのは省吾さんじゃありませんかっ!?」

「こんなんパンクになるかっ!!」

「ところで何で今更オリジナルやるわけぇ?いいじゃん。今までみたいでさ。」

そんな言い争いに誠二さんがダラリ、力なく口を挟みます。

「なぁ!今度CRASHやんねぇ!?白い暴動あたりから・・・」

「いいのかよ!このまんまで!」

溜まりかねたように省吾さんが怒鳴ります。


ism専用スタジオでは恒例のイザコザです。
もう東京遠征は再来週だというのに。
「ハァ。。。」
ドーバー海峡並みの深い溜息とともに、三太さんが言います。

「大体、こんな切羽詰まった頃にオリジナルなんて無理よ、省吾ぉ。」

「そうよそうよ!」

「東京でヤルからって色気出してんじゃねぇよ、バーカ!」

「!!ンだと!ゴラァ~~!」

皆からの非難に逆上した省吾さんは、誠二さんに殴りかかります。
もう止める気もございませんわ、はい。。
思う存分やっちゃってください。
この間に私は宿題でも済ませるといたしましょうか。。

「じゃあノブコ、私帰るわね。」

「はーい、三太さん。また来週ね。」

スネアのケースを抱えて三太さんはスタジオを出ていきます。
帰り際、とっくみあう二人を一蔑して、今度は津軽海峡並みの深さのため息。
秋の虫の音を蹴散らすように、車のエンジン音が遠ざかります。

「さ!宿題宿題。。」

罵倒とドタバタの中、私は隅っこに置いたテーブルで数学の問題集を開くのでした。



「あいつはあン時、sodomへ行けば良かったんだよ。」

ライブ前のリサの言葉を思い出しました。
切った瞼の下に濡れタオルを当て、そう話したのは誠二さんです。
いきり立った省吾さんは帰ってしまいました。

「確かにあいつ、ベースは上手いよ。パンクに拘る必要ねぇのにさ。。」

「パンクが好きって訳じゃないのですか?」

「特に執着はないんじゃない?ベース弾けりゃ、ジャズセッションにまで顔出すし。」

「省吾さんはismで妥協してるってことでしょうか?」

「かもね。。わかんねぇけどさ。なんか東京のライブ決まってから、あいつおかしいのよ。」


確かに。
マイ山で私の将来を尋ねたり、急にオリジナルをやると言ったり、不審な部分がここんとこ多いですわ。


「ところで誠二さんはどーなんですか?」

「俺?俺はパンク弾ければ良いんだよ、どこでも。」

「そんなもんですか・・」

「そう、そんなもんさ。ま、あいつとは幼馴染ってだけ。」

「私は今のメンバーで続けていきたいですわ。」

「嬉しいこと言うじゃん!じゃ・・これはご褒美ってことで。」

誠二さんが手渡したのは見覚えのあるボタンでした。
そうでしたわ!!
逃げるように帰ろうとする誠二さんの背中に、私のキックはギリギリセーフで間に合いましたわ。








  

2010年01月30日

ロリィタs Not Dead!! 20話




私の話におししょー様は「クスクスッ」と笑います。

あぁ、なんて心地よい「クスクスッ」の発音、発声なんでしょうか。
ガーデンに吹くそよ風のような。
色鮮やかな小鳥の鳴き声のような。
たまたま通りかかったパン屋さんの前で、香る焼きたてのいい匂いのような。
ともあれ、幸せになれる「クスクスッ」ですわ。

「でもね、犯人はそのリサって子じゃないと思うわ。。」

スカートのボタンを選ぶ真剣なまなざし。
言葉だけを私に投げかけます。

「でも!控室で眉切りハサミをチョキチョキチョキ鳴らしてんですよ!リサに決まってます!」

「簡単に決めつけるのはどうかしら?」

「!・・・」

そうでしたわ。
おそらく、おししょー様には真犯人が見えているのですわ。

「彼女は自分本位で嫌味な子だけど、それだけだわ。」

「えっ?おししょー様はリサのこと・・・」

「ええ、知ってるわ。省吾といつも一緒だったあの子ね。」

モヤモヤモヤが心臓あたりに産まれます。
私は嫉妬したのです。
省吾さんにではなく、おししょー様にです。

「彼女も随分、私を慕ってくれたわ。」

それ以降の言葉はなく、ドビュッシーの「月の光」がひっそりとナボコフの店内を包みます。

おししょー様がアトリエの棚から小型のトランクを取り出しました。
テーブルにそれを置き、開きます。
中には色とりどりの鳥の羽が入っていました。

「すごい!綺麗!」

「これをコサージュにするの。どうかしら?」

「そうですわ!おししょー様、今から動物園に行きません?」

私ははしゃぐ子供のように声を弾ませていました。

「今から?」

「ええ、今日はお店閉店ってことにしましょうよ!」

「それは出来ないわ。」

きっぱりとおししょー様は答えました。

嫉妬からの独占欲。
私は自分のわがままに恥ずかしくなりました。
そして冷たく拒むおししょー様を憎くも感じました。

「なによ!どうせ誰も来ないお店なのに・・・」

私は言えない言葉を胸で繰り返します。
トリートメントを変えたせいで、髪の先を手繰ってみても枝毛ひとつ見つかりません。
確かにここは私だけの居場所ではないのです。
「もう帰ろうかな。。」と思った時、おししょー様が言いました。

「動物園は無理だけど、お買い物つきあってくださるかしら?」

「ええ、もちろんですわ!」

「1時間ほどで戻ります。」という紙を木製のドアに貼ると、私たちは街へ出かけました。



車椅子のおししょー様は慣れた動作で街を歩みます。
すれ違う人との干渉さえ予測し、拒むように。
それはまるで、誰の助けもいらないと言っているようでした。

「スカートのボタンを切ったのは誠二くんよ。あの子イタズラ好きだから。。」

「えっ!」

私は驚きました。
犯人が誠二さんということにではなく、分かっていても教えてくれないであろう、おししょー様の言葉にです。

「でもいいじゃない?そのおかげでライブも成功したんですもの。」

「それは関係ないです!全くもう!クワガタもろくに捕れなかったくせに!」

おししょー様が又「クスクスッ」と笑います。
それは秋のはじまりを告げる日の陰りのように、私の耳をくすぐりました。


ショッピングモールの手芸店。
ネックレス用の9ピンとカチューシャ台を購入されました。
別に私がいなくても、車椅子でも十分買うことも、持ちかえることもできるものです。
そう、動物園などどうでもよかったのです。
おししょー様の優しさでした。

ショッピングモールのアーケードでは、見知らぬ新人ミュージシャンのインストアライブが行われていました。
私たちは立ち止り、それを見ていました。
やわらかな音楽が空間を埋めていきます。
通りすがりの人たちも足を止めていきます。
私はおししょー様の後ろに回り、車椅子のハンドルを握りました。

「ismもここでライブしますわ!そうすればおししょー様も見に来て下さるもの!」

「パンクは断られるわよ。」

「それなら省吾さんと誠二さんにバイオリンでも持たせますわ。」

「その前に東京のライブでしょ?その後、楽しみにしてるわ。」

「ハイ!」


外に出ると日が暮れていました。
私はおししょー様の車椅子を押して帰りました。
そうすることを許された気がしたのです。















  

2010年01月16日

ロリィタs Not Dead!! 19話


「デキン?・・ですか?」

「そう。出入り禁止のこと。」

「じゃあもうあのライブハウスではライブが’できん’ということですか?」

「・・・・・」

「あっ!省吾さん、そういう意味じゃございませんのよ!」

「お~い、これヒラタじゃねえのぉ?」

「あらあら、誠二さん、これはコックーですよ。あまり高くは売れませんですわ。」

「ノブコぉ、これはどうかしら?」

「三太さん!でかしたですわ!これはノコギリのチョウセン!高く売れますわよ!!」


ファーストライブを終えた夏休み、私たち4人はマイ山でクワガタ採りをしていました。
機材破損、そして負傷者多数を出した私たちは、ライブハウスから出入り禁止をくらいました。
それでも、そんなバカ騒ぎを噂で聞きつけた東京のライブハウスからオファーがきたのです。
そしてその交通費モロモロを稼ぐため、マイ山で収穫に励むのでありました。


「さぁ、みなさん!せっせと励んでください!オオクワガタなら一攫千金ですわよ!」

「なんで俺までこんな事せにゃならんのよ・・・。」

「誠二さん!生き銭持って東京で大暴れ作戦ですよ?お忘れですか?」

「あ~~!カブトムシばっかじゃねぇか!」

「省吾さん!イライラしたらダメですよ。クワガタの気持ちになって住み家を探すのです!」

「なんだよ?クワガタの気持ちって!?」

「ノブコぉ、これはどうかしら?」

「!!三太さん!でかしたですわ!立派なヒラタですわ!!!」


照りつける日差しを遮る雑木林。
時折かきわけて吹く涼風が心地いいです。
そういえば省吾さんに声掛けられたのも、このマイ山でしたね。
縁は異なものと申します。
まさかこうしてへんちくりんなバンドマンとクワガタ採りに勤しむ夏になろうとは、誰が予測したでしょうか?


「ところでさ、お前。卒業したらどーすんの?」

朽ちたクヌギを拾い上げ、一心不乱にクワガタを探す私に省吾さんが尋ねました。

「私ですか?・・実は服飾の学校に行こうと考えてるんですのよ。」

「・・ねーちゃんの影響か?」

「ええ、そうですわ!頑張ってデザイナーになって、ナボコフでおししょー様の元で働くのです!」

「フ~~ン、そうか。。。夢あるんだな。」

あら?なんでしょう?
その中途半端で、何か言いたげな返事は?

「ところでさ。あのライブ観に来た連中が言ってたんだけど。」

「はぁ?何をでしょうか?」

「お前のことタータンチェックのクマのパンツの娘って言ってたけど、お前あの時スカートだったよな?」

「さぁ!!お喋りはそのくらいで働いて下さい!!」

「!?なんだよ急に?」

ステージからでは状況が分からなかったのでしょう。
パンツはパンツでも違うパンツでございますわ。
茶色い光沢を持った大きなムカデの出現に、おぼっちゃまの誠二さんが奇声を上げます。

「でもさ。あの日のライブのお前、スゲエ良かったよ。。カッコよかった。。」

省吾さんはそう言うと、ザクザクザクとブーツの足音を残し、雑木林の奥へと歩いていきました。

「ノブコぉ、これはどうかしら?」

「!!三太さん!でかしたですわ!これこそ黒いダイア、オオクワガタですわ!!」


省吾さんの後ろ姿を見ながら、私は少しだけ彼の夢について考えました。
そして卒業後のismの行く末を。

夏はもうすぐ終わります。
おししょー様が、亡きお父様のコートを私に託したということの意味を知ります。
このマイ山の雑木林が枯れ落ちる冬までは、おそらく私たちは突っ走るのでしょう。
  

2010年01月09日

ロリィタs Not Dead!! 18話



会場はヒートアップしてまいりました。
かなりの震度でぼろっちい雑居ビルは揺れております。
最前列は押され押されての将棋倒し。
私の目の前には人並みに押しつぶされ、突き上げた腕しか見えない方もおられます。

あぁ・・力尽きたのでしょうか?
血の色を失くしたその腕は、枯れ落ちるひなげしの花のように人の波に沈んでいきました。
ナンマイダブナンマイダブですわ。


私はひたすらに歌います。
声を上げて、がむしゃらに。
歌うたび、正常な感覚は麻痺してまいります。
あぁ・・・ごめんなさい。
まだ正しい意識があるうちに、心の底から謝罪したいのです。


私がほんのちょっと、ちょびっとだけでも天使の声を授かっていたならば、岡本さんちの鶏も卵を産んでくれたことでしょう。
私の村に「鬼伝説」が再び沸き起こることもなかったでしょう。
牛舎では新たな命を誰もが祝福したことでしょう。
我が家である酒蔵納戸、ism専用スタジオ。
そこで録音したMDを私は聴いてしまいました。
そうです。
聴いてしまったのです。。。

前衛的ですか。
革命的ですか。。
破壊的ですか。。。
なるほど、全て当てはまる歌声ですわね。
自覚させるにはあまりに残酷な現実でした。

でも、思うのですよ。
おししょー様の導きのもと、ここにいられることを愛おしく。
アホアホな連中と一緒にここで狂えることを愛おしく。

歌う毎、叫ぶ毎に、後頭部から発信された電流は脊髄を痺れさせ、流れる汗は胸の谷間を伝います。
私が私でなくなる?
いいえ。
私の奥底に潜んでいた悪魔だったのかもしれません。
なりません!
なりませんわ!
・・・でも。
アドレナリン全開!言いしれぬ快感ですわ!!



アラアラ?
随分ボルテージ上がってまいりましたわね。。
同時に縦揺れ横揺れと、更に震度は上がります。
このビル大丈夫でしょうか?建築基準法も怪しいものです。

オヤ、まぁ!?なんですか!?
その「オイ!オイ!オイ!」っていう掛け声は!?
人を呼ぶにはあまりに失礼じゃございませんこと?
一言言ってやらなければいけませんわ!

「静かにぃ!!失礼じゃないですか!人を呼ぶにオイとは!!どーいう&%!0!##%$」

間奏中に叫ぶ私のメッセージも、上手く聞き取れない爆音の中、ただの雄たけびに変換され群衆をあおるだけでした。

3曲目、4曲目とますます熱気を増すステージ。
誠二さんが3人、省吾さんは5人ほどステージに登ろうとする客を蹴り落としました。
後方から飛んできたUFO的物体はシンバルで、命中した客は鼻血を噴出しながら人の波に沈んでいきます。
あっ、あちらではワッショイワッショイと胴上げがはじまりましたわ。
きっと担がれた人は今日が誕生日かなんかの記念日なんでしょう。おめでたいですわ。
そしてブーツのかかとで蹴られた方と取っ組み合いの喧嘩ですわ。
もー。。なにもライブ中にやらなくてよろしくてよ。

私は「天使」からではなく「鬼」から頂いた声を武器に叫びます。
ラスト曲は「Johnny Thunders」の「BORN TO LOSE」。
マイ山で鍛えた喉はジョニサン以上にハンパじゃございませんわよ!
枯れることない泉のような衝動が私の中で沸きあがります。
砕けた3枚目のシンバルが私の耳たぶをかすめ、床に血が滴り落ちます。
あっ、省吾さん誠二さんのディフェンスをくぐった不届き者がステージへ上がりました。
ヤレヤレ。
仕方ありませんわね。
私はおもむろにマイクスタンドを振り回すと、見事脇腹に命中しました。
会場から歓声があがります。
調子コイた私が、うずくまったその不届き者をミュールで踏みつけた時、私は気づきました。

「・・・スカートが開いてる・・・・」

いつしかスカートを止めていたヘアピンは落ちて、わたしのおみ足が公衆の面前に。。
いや、おみ足どころか・・・。
なるほど。。盛り上がるわけでございますわ、こりゃ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「キャア~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

我に返った私は、残りの歌のリプレイも放棄して舞台袖に逃げ込みました。
投げ捨てたマイクは、耳鳴りに似たハウリングを会場内に響かせます。
そのエンディングが、さらに会場を盛り上げたのは言うまでもありません。
それに便乗してか誠二さんはギターを床に叩きつけ、三太さんはドラムセットををひっくり返し、お行儀悪くステージを散乱させて終了です。
アンコールの声に私は「無理っ!無理ぃ~~~!」と泣き喚き、こうして我らismのファーストライブは全然無事じゃなく終了したのでした。


  

2010年01月02日

ロリィタs Not Dead!! 17話



おかしな現象ですわね?

さっきまで客席前列は普通の青年男女がいたはずなのですが・・・?
sodom終了後、入れ替わるように最前列に陣取ったのは、「オラオラ系」をとっくに卒業し、更に進化を遂げたヒールな面々。
社会不適合者の集いとなっておりました。

チューニング、アンプのセッティングしてるメンバーに、「早ぅやらんかい!」「ウォ~~イ!バカ野郎~!」「三太ぁ!ぶっ殺す!」だの罵倒としかとれない声を容赦なくかけてます。
放り込まれたビール瓶はシンバルに当たり、警鐘のごとく鬼気迫る音をリバーブさせます。

イントロにあわせ、さっそうと登場が私のリクエストであり、段取りです。
それまでに勝手に開いてしまうスカートをなんとかしなければなりません!
なんとかしなければ・・・

そうですわ!ヘアピン!!
これを使ってスカートの裾を留めれば!
私は周囲を見回し誰もいない事を確認すると、スカートを大きく捲りあげます。
あぁ、6段ものフリルが邪魔して裾がどこだかわからないじゃありませんか!?
焦るから尚のことですわ。
落ち着いてビクトリア!
あっ!三太さんのカウント鳴った!
ism風アレンジ、「SHAM69」の「BORSTAL BREAKOUT」です。
ひっかきまわすかの誠二さんのギター。
ゴリゴリゴリッとえぐるような省吾さんのベースが覆いかぶさります。
あ・ああ、もう少し。。
OK!裾止めた!!GOですわ!!!


セルロイドの彩りがグルグルグルと交差するステージ。
1本のピンスポットが遅れて登場する私をサーチします。
その眩しさで客席がまるで見えません。
ふんだんに使われたドレスのシルバー。
それに反射した光が、会場のあちこちに小さな星を作ります。
異質なものを拒むかのように、空気が、そして流れが変わるのが解ります。
さっきまでの罵倒は当然、私に向けられます。
「ウォ~~イ、ネェちゃ~~ん!」だの、「デケエな、あいつ!」だの「X%!’&~(自主規制)」だの。
なんて下品な人たちでしょう!
手のひらの汗は止まりません。
さながら監獄に放り込まれた乙女です。

「落ち着くのよ、ビクトリア。」

私は自分に言い聞かせます。
転ばないように。
そして1歩1歩静かに。
こうなるシュミレーションはレクチャー済みですわ。

「堂々とよ。」

「そうよ。。堂々とやればいいの。」

呟く私の声にリンクするように、どこかでおししょー様の声が聞こえました。

センターに立ち、マイクに手を置きます。
さっきまでリサが使っていたマイクスタンド。
175cmの私にはあまりに低すぎます。
高さを調整しなければ。。
あら?
うっ!
固い!!
マイクスタンドのグリップが動きません。
手のひらに掻いた汗で滑るため、尚の事。
イントロは続きますがそろそろ終盤。
歌が始まってしまいますわ!
ヤバイですわ!
あ~~~~~~~~~!
もう間に合いません!!

中腰になり、マイクを両手で握りしめ、覆いかぶさるように私は歌いました。
優雅に、そして高らかに歌う計画が、瞬く間に大失態です。
ヘッ?
アララ??
うつむいているので様子は窺えませんが、その姿、その声に会場が沸いています。
何に盛り上がってるのでしょう?
私のお歌ですか?

あぁ!そうですわ!
この姿ですわ!!
これはかつてのピストルズのジョニー・ロットンさんスタイルです。
あの無様にヨタヨタと中腰で歌う見苦しい格好ですわ。
奇しくもソレがパンク野郎の心を掴んでしまったのですね!?


舞台の袖で腕を組み、睨みつける視線を感じました。
リサが「しくじった!」って悔しげな顔してました。
な~~るほどね。。
マイクスタンドを強く固定したのも彼女の仕業ですね。
一言言いたいとこですがここは。。。

「ざまぁみろぅ!ベロベロバー!!」

そう念じると、私は中指を立てて彼女に突き付けたのでした。










  

2009年12月26日

ロリィタs Not Dead!! 16話




客席の照明が落とされ、室内の温度が変わります。
ライブがスタートしました。
奔放に楽しもうとする客席。
それと裏腹に、バックステージは緊張感が支配する世界でした。

ま・ま・ま・ま・。
まずいですわ。
ド緊張ではありませんか、私!
どんだけ拭いても噴き出る手のひらの汗。
「止まりなさい!あなたたち!体中の水分を全て排出してしまうおつもりですか!?」
と掌に向かい言ったところで止まりません。

あぁ。。。
今すぐ、メンバーに言いたいことがあります。。
確認しなくてはなりません。

「ノブコ、顔色悪いわよ?」

三太さんが言いました。

「大丈夫よね?トイレは済ませた?」

「済ませました(怒)!!」

「しかし。。奴ら、いつも以上に気合入ってねぇ?省吾ぉ?」

ステージではsodomの演奏。
それを見て誠二さんが言います。



「パンクなんてデタラメな伝統は私たちが殺してあげる。。」

さっきのリサの言葉を思い出しました。

こういうことなのね。。
圧倒的な実力を見せつける魂胆ですね。
確かにismの極悪ファンまで冷やかしを止め、おとなしくステージに釘付けです。
そしてもう一人、舞台裏でステージに釘付けされているのは省吾さん。
そのクオリティにうすら笑いを浮かべています。
その笑みはまるで勝算アリの悪人の顔ですわ!

「‘家は家、よそはよそ‘、って死んだおふくろが言ってたっけな。。」

誰に向かって言うわけでもないその言葉に、誠二さん、三太さんが頷きます。

「まぁ、うちは何一つ不自由な事なかったけどな。。」

「あら?誠二さん。それは結構ですこと。」

「それにこっちにはリサ以上の歌姫がいるしな!」

アラ、まぁ!
嬉しい事言って下さるのね。


千差万別。
死んでしまった音楽であろうが、今を生きる音だろうが、関係ないですわ。
クリノリンは19世紀に滅びたファッション。
今に蘇らせる事が出来るのは、今それを纏う者。
そこに何も残せなくても、たとえそれが出鱈目であっても構いません。
花を愛でう者、石を愛でう者がいると同じように。

機能的、大衆的ばかりじゃつまらなくございません?
こんな時代だから、出鱈目で無駄なものがあってもよろしくてよ。
ロリータもパンクも似ているのかも知れません。

納得の演奏のsodomには称賛の拍手を素直に送りましょう。

でもねリサ。。
あなたは勘違いしてるわ。
ものさしの尺度が違うのよ。
そして私たちは殺されたりしない。
そっちがその気なら、逆に返り討ちにしてあげますわ!

sodomはラストのバラードをしっとりと歌い上げ、私たちの出番がやってまいりました。

「さて、行きますか。。」

各々が楽器を手に袖から出ようとします。

「あ。。待って。」

私の言葉に全員が立ち止ります。
今言わなければなりません。

「あの。。。私、もう帰ってもいいですか?」

「!!いい訳ねぇだろっ!!!!!!」

ユニゾンするみんなのその声が聞きたかったのです。
私はismに必要な歌姫。
それだけ確認したかったんですよ。
「逃げんなよ!」と省吾さんは私の鼻っ面を指差し、3人はステージへ向かいました。



胸元のジャボ。
その髑髏をギュッと握りしめます。
コルセットにしなかったおししょー様の意図を今知ります。
ボーカリストは腹式呼吸ですものね。
ローズブーケットだろうが知ったこっちゃありません。
こっちはホワイトシルバーのエクステをぶら下げた髪に黒薔薇のコサージュですのよ!
そして古(いにしえ)のクリノリンよ。
今、復活の時が来たわ!
スーパーフリルのゴブランがスカートにメタモルフォーゼですわ。
ですわ。
です・・・で・・あれ?
あれれ!?
スカートの前が・・あれ!?
アーーーー!!
フロントのボタンがいくつか切断されてます。
これでは演奏中にスカートがぱっくり開いてしまいますわ!
そんなバカな!
ハッ!
私は控室でリサがチョキチョキチョキやっていた眉切りバサミを思い出しました。
まさか・・・あいつ!!!











  

2009年12月19日

ロリィタs Not Dead!! 15話


わお!!
ワサワサワサと人が集まってまいりました!
舞台の袖から客席を、こっそり覗くのでございます。

私たちを含め、出演グループは4組。
パンクバンドは私たちだけ。
後は弾き語りの方1名、そしてポップなロックをするバンド2組。

あからさまに敵対視したツンデレリサのバンド「sodom」は、素人目でもわかるほど完成されたパフォーマンスでしたわ。
お歌もしなやかでお上手!
プロデビューが期待されているという話も頷けます。
悔しいですわ!キィ~~~!!
それより弾き語りのshunさん!
リハにて私のリクエストで涙腺直撃曲「ラブイズオーバー」をやってくださったのは感激でした。
ちょっとクールで男前ですし!
あぁ、そうですよ。
こういった音楽性のフィットした方と組むのが賢明ですのよ!
漆黒のラビリンスに迷い込んだ乙女を救出する王子様になって下さらないものでしょうかしら?

と。
そんな夢もうたかた。。。
shunさんは私たちのリハをチラッと見ると、「関わっちゃいけないオーラ」を放ち、なにくわぬ顔で控室に戻ってしまいました。。。


あぁ、またやって来ましたわ。。
あれはウチら(ism)の客ですわ。
当然のように判別できます。
その人種たるや!
くわえ煙草で店内にズカズカと入場するや否や店員と揉めあったり。
あの人はこんな暗い店内でサングラスして前見えてるのかしら?
うわ!革のベストから見える腕のいたるところに入れ墨ですわ!
床にドカッと座りこみバカ笑いする連中。
あっ、あっちじゃドリンクこぼした一般客に因縁つけてますしぃ~~~。。
・・・この平和な日本の社会の中で暮らしていてはいけない人たちばかりですわ。。

「お前さぁ、隠れてるつもりだろうけど丸見えだぜ?」

後ろからの声にビックリ、飛び上がってしまいました。
着地した際のミュールの「ドン!」という音が反響します。
省吾さんでした。

「お前デカイんだからさぁ。。それにそのスカート、半分以上出てるっちゅうの。」

みるとアイスクリーム柄がかなりステージにはみ出しています。
お客も数名こっち見てました。

「あ・・いえいえ、こっそり見てたわけではございませんのよ。。」

「いいから控室にでもいろよ。」

そういうと省吾さんは行ってしまいました。
控室が嫌だからここにいるのにぃ~・・・。


一応女子控室が設営されたのは幸いでした。
しかしそこはいかにも物置だった1室。
壁紙はところどころ剥がれ、一角に積まれた段ボール。
ただでさえ居心地悪い中、アノ!ツンデレと一緒なんて!
ええ、散々言われましたわ!

「省吾もいつまでパンクに執着してるのかしら?」

私たちのリハをどこかで観てたのでしょう。
リサは鏡に向かい、眉切りバサミで眉のお手入れをしてました。
控室に戻った私を一蔑、そして言うのです。

「しかもこんなド☆素人と!」

「パンクは・・パンクの何がいけないのですか!?」

ド☆素人の私も言われっぱなしじゃ気が済みません。
ちょっとお歌が上手いからっていい気にさせといちゃならんっ!ですわ!!

「パンクなんてもう滅びた音楽よ。‘Punks Not Dead!‘とか言ってるけど死んだようなものだわ。」

水を切らしブザーを鳴らす加湿器に、彼女は飲んでいたペットボトルの水をトクトクと注ぎました。

「バカの一つ覚えみたいにギャンギャンギャンギャン鳴らすだけでしょ?あなたもウルサイだけって思うでしょ?」

「その通り!・・・あっ!いいえ!違いますわ!パンクはもっと・・」

「省吾もあの時、私と一緒にsodomに来ればよかったのよ。。」

その一言だけ。
その時だけ、彼女は本心を見せたのかもしれません。
彼女は省吾さんへのいっぱいの愛をもったまま、そして死ぬことも出来ない乙女の顔をしていました。
眉切りバサミを悪戯に鳴らし、空になったペットボトルを屑かごに放り込むと、あからさまな作り笑顔で私に言いました。


「せいぜい恥かくといいわ。パンクなんてデタラメな伝統は私たちが殺してあげる。。」




  

2009年12月12日

ロリィタs Not Dead!! 14話




例年以上の記録的猛暑だそうです、今年は。
街は田舎以上に、うだる暑さがうねって渦巻いてる感じですわ。
3つの鞄を持った・・というより引きずった私は目的地へ。
さぁ!ライブの日がやってまいりました!

市街地から少し外れた場所にあるライブハウス。
渡された地図を頼りに一人でやってきました。
着て行くにはあまりに不便なドレスの為、手荷物としました。
それでもまさか、鞄3つもになろうとは・・・

こう暑いのでは普通なら「Tシャツ&ミニスカート」というのが一般&無難なんでしょう。
ところがロリィタはロリィタであるべく、特に夏のロリィタは悩むのです。
「むさくるしい」「暑っ苦しい」とならないよう、「カワイスズシイ」となるコーデを心がけるのです。
本日はリボンリボンリボ~ンのブラウスにスカラップたんまりのアイスクリーム柄のスカート。
この「アイスクリーム柄」ってのがポイントでもありお気に入りです。
頭にはスカラップハーフボンネットという「ロリィタ精神」に乗っ取ったコーデ。
ただでさえ世間から「イタイ!」っていう側に分別される人種。
鞄3つ分の衣装を持った私は「イタイ」どころか、さながら家出少女のようでした。


「ヘタクソ」という刻印を押された私でしたが、やれるだけの事はやったつもりです。
あれだけ耳障りだった爆音も、音に聞こえるようになっただけでも大きな進歩ですわ。
未だ「音楽」と総称するには疑問が拭えませんが。。
ま、いいでしょう。
全ては慣れですわ。

予定集合時刻より10分早く、エッサホイサと到着しました。
そこは狭っちい雑居ビル。
あら?
間違いございませんよね?
こんなちっこいビルの中にライブハウスがあるのでしょうか?
「SOUND 8」・・2Fって書いてありますね。
まぁ、2Fへ行ってみましょう。
狭い階段に鞄がゴツンゴツンゴロンと当たります。
ドアに「SOUND 8」のステッカー。
ここですわやはり。
ガチャ。。

ガチャガチャ。。。
・・・閉まってます。。
どーにもこーにもなりません。
とりあえず下の歩道で待つことにしましょうか。

定刻になっても誰も現れません。
近くにこじんまりしたカフェでもあれば、そこで時間を潰すのですが、どうやらここは工業地帯の一角。
町工場のツナギを着たおじさんが、路上でへたり込む私をジロジロジロと見ていきます。
全く!
時間にルーズな三太さんは置いといて、乙女を待たすとは何事ですか!
店も店です、「なっとらん!」ですわ!



あら?
あれは?
ひょっとしたら?
日傘を差した女の子が通りを渡ってきます。
その姿、ロリィタですわ!
花柄のジャンバースカートにひまわりのコサージュ。
クラシカルロリータ、略してクラロリですわ!
吹雪のエベレストで生存者を見つけた気分です。
あっ!こっち来る!
エッ!?
小柄の可愛らしいロリィタさんは、私に軽く会釈をして雑居ビルの階段を上ろうとしました。

「あっ、あの。。」
思わずかけた声に彼女は振り返ります。

「・・はい?」

「2F、まだ閉まってましたけど。。」

彼女はヤレヤレというような諦めの表情をして私の隣へやってきました。

「いつもこうなのよ、このお店!早くリハしたいのに。。」

「アラ!出演者なんですか!!実は私も!!」

「・・・あら?そうでしたの?私はてっきりグルーピーかと。。」

「なんですの?そのグルーピーって?」

「バンドの追っかけのファンのことよ。」

「そうですか・・・。あの。。そのお花柄のジャンバースカート素敵ですわね。どこのブランドですの?」

「イノセントワールドよ。それにお花じゃなくてローズブーケット。。」

「そうですか。。ローズブーケット。。。ですわね。。」

・・・
なーんかやな感じですわ。
どことなく上から目線の物言い。
クラロリのツンデレ娘ですわ!
歳は私と同じくらいでしょうか?
確かに美人でチヤホヤされそうなタイプです。
彼女は私の服を見て言いました。

「あなたのソレ・・パイレーツ?」

「ええ、そうですの。私おっきいからサイズがなかなか無くて・・」

「ホント、あなたデカイわね。それにアイス柄って(笑)・・」

「(怒)・・・」

「そのブラウスは?」

「これですか?これはナボコフっていうお店で・・」

「知らないわ。」

「(怒×2)・・」

「ところで今日はなんていうバンドで出るの?」

「ismっていうバンドで・・・」

「知らないわ。」

「(怒×3)・・ところであなたのバンドは?」

「・・私?」

「ええ。」

「バンドはsodom。私はボーカルのリサよ。」

「!!!」


5分後、省吾さんが到着しました。
クラロリツンデレ娘は私が省吾さんのバンドのボーカルと知ると、殺意を持った目で睨みました。
その5分後、運転手つきの黒いベンツで到着した誠二さん。
申し訳ない感じを微塵も見せない店主がノソッと到着したのはその10分後。
お店が開いた30分後、リハ直前に「ごめ~~ん!遅れちった!!」と登場した三太さんでした。
  

2009年12月05日

ロリィタs Not Dead!! 13話



「なにもさぁ、練習の時まで着るこたぁねーんじゃね?」

は?
ボヤキですか?それは?
ギターの誠二さんがポツリと言った一言でした。


酒蔵納戸の我ら「ism」の専用練習スタジオ。
普段は部屋着、「Champion」のジャージ(上下)で挑むのですが、ドレスが出来上がったからにはそうもいきません。
私こと、ビクトリア専用姿見(450×2000cm)も置いて、右へ傾げたり左向きもあぁ、素敵ですわ。。

「あら?いいじゃない!ステージ映えを考えるのもボーカルの務めよ。」

賛同してくれたのはドラムの三太さん。

「そうよそうよ!文句ありまして!?」

「・・金出したのは俺だけどな。。」

ポツッと今度は省吾さんがボヤキます。

「ドレス生地代は負けとくわ。」と言うことで、省吾さんはおししょー様から請求書を渡されました。
浮かれてた私の耳に、「ねーちゃん、せめて分割にしてくれよぅ!!」と懇願する彼の声がスルーしていきました。
あぁ!なんて高貴で美しいのかしら!!このドレス!!!
思わずターンする私の後ろで、姉と弟による値段交渉の小競り合いが続いておりました。

「ノブコ、素敵よ!似合ってるわ!」

「でしょ!?三太さん!あのねこれねクリノリンなのですわよ。」

「クリノリン?」

私はスカートを少し捲りあげ、曲線を象っている骨組みを見せました。

「あら?まるで鳥かごね。」

そうなのです。
これはもう「お洋服」というより「鎧」に近いのかも知れません。
スカートの形の鳥かごフレームに、カーテンのようにスカートを巻くのです。
巻いたスカートは正面で閉じる形になります。
キチンと閉じないとスカートが開いて、「あら大変!sos」になってしまいます。

「どれどれ!俺にも見せろよ!」
誠二さんがイヤらしい笑いを浮かべ近づいてきます。

「おい!それより練習だろ!?もうライブ近いんだぜ。」

省吾さんの言葉に小さく舌打ちをして、誠二さんはギターを抱えます。
チューニングしながら上を見上げ、思い出したように口を開きました。

「そうそう省吾、知ってる?今度のライブ。sodomも出るって?」

「・・・」
省吾さんはめんどくさそうに無視です。

「誰です?そのsodomって?」

「省吾の昔の彼女。そいつがいるバンドだよ。」

ほぉ!それは初耳ですわね。
省吾さんはなんのリアクションもありません。
意地悪く誠二さんは喋ります。

「俺、初めてあんた見た時、思ったよ。。あぁ、またこういったジャンルの・・」

言い終わるも待たず、ベースのリフが鳴り響きます。
ラモーンズの「BLITZKRIEG BOP」のイントロです。
あっ!三太さんもスティック持って戦闘態勢でスネアを打ちました。
誠二さんは軽く省吾さんを睨むと、チューニングもそこそこにギターを鳴らし、成り行き任せに練習がスタートされました。


ライブは8月。
そしてもうすぐ夏休みが始まります。
けたたましい蝉の声がひっきりなし。
私は大勢の観衆の中、このエレガントな出で立ちで歌姫となるのです。
誰もがひざまずき、ウットリすることでしょう。




パンクロッカーが崇拝する「sex pistols」。
ネットで動画を拝見しました。
ボーカルのえっと、ロットンさんですか?
なぜにあんなにマイクに覆いかぶさって歌うのでしょうか?
中腰になってまでかぶりつくように。
当時のマイクはそんなに音の拾いが悪かったのでしょうか?







  

2009年11月28日

ロリィタs Not Dead!! 12話





いただいた別珍のロングコートは、船乗りで冒険家だったおししょー様のお父様のものでした。
一人きり、故郷である港街へ取りに行ったのです。
無茶を咎めるように、省吾さんが口を尖らせます。

「コートを取りに行ったわけじゃないわ。あの船に用があったのよ。」

「船って、オヤジの船か?」

「そうよ。父の土産のゴブランがあの船に積んであったわ。」
おししょー様は私のスカートを触ります。

「ゴブランとはこの布の事。タペストリーの1種で・・」

「そんな事どうでもいいんだよ!」

揺れた小さなテーブル。
置かれたティーカップに紅色の波紋が拡がります。
急に立ち上がった省吾さんは気まずそうにツンツクの頭をボリボリボリと掻きました。

「そうじゃなくてさ、なんで一言。。」

「お墓にも行ったわ。」

「!・・」
言葉の先を見透かされた省吾さんが口を閉ざします。

「省吾が手入れしてくれてるのね。。ありがとう。」

「。。。」

「未来が見えるこの力も、まんざらじゃないって思えるようになったわ。。」

半袖の女子中学生が3人、はしゃぎながら通りを闊歩します。
すれ違うベビーカーを押した若い夫婦。
やわらかな初夏の日差しも届かない部屋。
そんな窓の外を眺め、おししょー様はティーカップに新たにオレンジペコを注ぎます。

「お墓の前で祈ったわ。でも何も見えなかった。死んでしまった母も父も、その未来も、魂の出掛けた先すらも。。」

「・・・なんでもっと、もっと早く帰ってくればよかったんだよ。。」

「そうね。。でも出来なかったわ。傷は私が思った以上に心を蝕んでいたわ。」


思い返すように呟いたのはどこかフッきれたものがあったのでしょうか?
白いその顔から血の通った表情を見たのは初めてでした。
ドレスのゴブランの為、里へ帰ったなんて嘘。
おししょー様にとって未来を見据える1歩だったのです。
気づいてしまいましたわ、私!!
過去も、そしてそれに伴う煩わしい能力も、おししょー様はきっと受け入れようとしているのです。
なんか私、少しウキウキしてしまいましたわ!

「そう、それより試着!早くいたしましょ!おししょー様!」

会話に割り込んだ私に省吾さんは小さく舌打ち。
不毛な会話などもう必要ありません。
私たちは進むのです。

「・・ったく、とっとと済ませてくれよ。。」

「これ、預かってくださる?」

私は省吾さんにコートを手渡します。
渡された思い出に省吾さんは少し躊躇いをみせ、それでも大切そうにそれを抱えました。

「オヤジのコートが着れるなんて、どんだけデカいんだよ、お前は。」

「省吾さんも牛乳でも飲んだらいかが?小魚とか?」

「カルシウムかよ!?余計な御世話だ!」



拘束具のような窮屈を感じさせるクリノリン。
動きがあまりに不自由になるため、19世紀に暖炉の火がスカートに燃え移り、焼死が頻発したという噂も頷けます。
祟られ呪われた負のドレス、クリノトンスタイル。
その優美なまやかしに心奪われた私が迷い込んだのは「パンクロック」という漆黒の闇。
アイテムのジャボタイに刺繍されている髑髏の空っぽの眼が光ります。

「進化するドレス。。ですか?」

「そう、あなた次第でこのドレスは本物になるの。」

「・・・もし・・私の力が足りない場合は?」

「。。ただのコブランの布だわ。」


甘美で無垢な純粋に奇異、異端が煙のようにつきまといます。
言い知れぬ妖しさのオーラを纏うドレスは私を何に変身させてくれるのでしょうか?























  

2009年11月21日

ロリィタs Not Dead!! 11話


「~~!♪」

1通のメールに私は歓喜の声を上げました。
おししょー様からドレス完成の連絡です。
早速今度の土曜、行かなくてはなりません!

あら?メールがもう1通。
弟の省吾さんからですわ?
初ライブが決まったとの連絡ですか、あらそうですか。
今回のドレス、お支払いは省吾さんですから一緒に連れて行かねばです。
そこンとこも含め、早速返信です。

あぁ!一体どんなドレスが出来上がっているのでしょう!?
期待で胸が張り裂けそうです!
シンシンシンと窓の外の雨が土の匂いを運んできます。
ゲロゲロゲロゲロと大量の蛙が喜びの声を上げる中、私は窓を閉め眠りに落ちるのでした。



「パンクロックはねーちゃんから教えてもらったんだぜ。」

省吾さんは話します。
週末土曜、私たちは「ナボコフ」へ向かう途中でした。
意外でしたわ。
あの物静かなおししょー様が、「雑音」としか思われぬ音楽に耳を傾けていたなんて。

「では今回の初ライブ、おししょー様にも観て頂かなくてなりませんね!」

「!・・・いや、それは・・無理だろ。。」

「あら?どうしてですか?」

「。。。」

あぁ。。。
又やっちまいましたわ。。
車椅子ではライブハウスのような店内で不自由なのですね。
なんてデリカシーのない私!
その意味を把握し、反省する私に気づいてか、省吾さんが言いました。

「・・でもさ。。いつか観てもらえるといいよな。。」

「ハイ!!」

7月後半、夏の日差しが容赦なく照りつけます。
田舎では嗅ぐことができないアスファルトの打ち水の香りを私は大きく吸い込みました。
心なしかフンワリスカートもいつもより膨らんでる感じですわ!
「ナボコフ」に到着し、鳴らしたいつものドアの軋む音はスタートの号令のようでした。


ほの暗い店内。
店内に流れるパイプオルガンのバッハ。
連絡なくともおししょー様は待ちかねておりました。

「さぁ、いらっしゃい。」

奥のアトリエへ入るのを許されたのは私だけ。
おししょー様の言葉に促されるまま、私はアトリエに踏み込みました。


厳粛なバッハは時代を錯乱させるおまじない。
微かに香る異国の匂い。
そして穏やかなノスタルジーが室内の隅々の空気まで変えています。
まばたきも忘れるほど、私はトルソーの纏うドレスに目を奪われていました。

袖先と襟元にパールボタンをあしらった赤のシフォンボレロ。
前開きのビスチェからインパクト強く、白黒のセーラーカラーのブラウスをのぞかせてます。
ビスチェ?
いいえ!これはビスチェワンピースですわ!
ウエストにはコルセットではなくエナメルのベルト。
そしてスカート裾先はエ~ッと、いっちにい・・6段フリル!
薔薇のふくれ織りがクラシカルですわ!
当然このフンワリフックラスカートですからパニエが・・・あら?
・・・えっ?
パニエがないですわ!!?

「クリノリンよ、このドレスは。」
おししょー様が言います。

「クリノリン?」
スカートを覗き込むと針金が提灯の枠のように円錐型に組まれています。

「19世紀にヨーロッパで流行したスタイルよ。これがクリノリンスタイル。」

「19世紀といいますと、ロココやフランス革命の後ですね。」

「そう。よくご存じね。この時代に第2ロココスタイルが流行したの。」

「えっ、あの優雅なファッションがですか?」

「そうよ、でも目的は違った。そこに自由はなく、女性の体形を隠すがため生まれた束縛的なファッションよ。」

「束縛的・・・ですか?」


破壊的&革命的なパンクロックなのに束縛的とは?
私はその意味を尋ねようとしました。
するとおししょー様はクローゼットを開き1着のコートを出しました。

「今は夏だけどこれも持っていって。寒くなったら使うと良いわ。」

そのコートはおししょー様の作品にしては地味で、それでいて仕立ての良さは分かるブラウンのロングコートでした。

「あのドレスは進化するドレスよ。後はあなたがアレンジするのよ。」


隣の部屋からギャンギャンと省吾さんの呼ぶ声がします。

「あらあら。試着は後にしましょう。」

おししょー様は紅茶を淹れにキッチンへ。
私は手渡されたコートを持って店に戻りました。

「全くぅ!待たせすぎだぁ!!」

「あら、乙女の重大な1日ですもの!ゆったり待つことしてもよろしくてよ?」

「なーにがよろしくてだ!よろしかねぇよ!」

省吾さんはそういうと、私の持っていたコートを一瞥。
途端に顔色を変えて言ったのです。

「おい!?おまえ!そのコート!!」


誰かにとって大切なものは、他の誰かのガラクタかもしれません。
でも私のドレスも、省吾さんの音楽も、おししょー様の過去も、その他愛ない執着を誰かが愛おしいと思ってくれるなら。
その人の「大事」と思う気持ちに気づき、大切に出来るなら、世界に諍いは起こらないのだと私は思ったのです。
















束縛的










  

2009年11月14日

ロリィタs Not Dead!! 10話



バンド名は「ism」と書き、「イズム」。
命名はおししょー様です。
ショーゴ、セイジ、サンタとカタカナ読みのステージネーム。
私はど~~しても「ノブコ」というのが耐えきれず、控え目に「ビクトリア」という芸名を授かりました。

新たに物事をはじめるという事は、様々な障害が待ち受けているものです。
手始めに私の歌は「ヘタクソ!」という屈辱的な烙印を押されてしまいました。
シクシクシク。
それでもおししょー様が下さったこの名前。
汚すことなく、張り切って勤しみたいものですわ。

楽器店の3Fの練習スタジオ。
そんなこんなでバンドの練習がスタートしました。


「だいたい、こいつを送り迎えする身にもなってみろよ!」

「そりゃお前が連れて来たんだからしょうがねえだろうよ!」

「片道2時間半だぜ!?山道を!ガソリン代で破算しちまうよ!」

「知るかよ!このシスコン!!」

「ンだとぉ~!この・・」

「ダン!」
とスネアドラムが一撃。

「もう!いい加減して!!!」

そう叫び、二人の喧嘩を制したのは私ではなく三太さんでした。
騒動の張本人の私は、はぐれたハムスターのようにスタジオの隅で耳を塞ぎ、フルフルフルと縮こまっていました。
もういやだもういやだもういやだもういやだもういやだ・・・・・。

「いやだ言ってないで信子もなんとか言いなさいよ!」

三太さんは私に詰めより、無理やリ立ち上げらせました。

「う~~、帰りたいよぉ~~~う!!」

宙を仰ぎ、心からの叫びでした。
スタジオの練習代もバカになりません。
そんな中、時間の半分はこの二人の揉め合い。
もうウンザリです。




夜に飛ぶフクロウを見た事がありますか?
ある日の練習の帰り道です。
車と並走して走るフクロウ。
彼らは普通の鳥と違い平面な顔を持ってます。
それが不意に振り向く恐怖。
さながら闇に浮かぶ人面です。
省吾さんは「ヒィッ!!」と叫び声を上げ、急ブレーキをかけました。

「もうホントコリゴリだ。。。」

そう呟くと家の前で私を降ろしました。
チリチリとなく虫の音の中、闇に車のテールランプが小さくなっていきます。

「コリゴリはこっちですわ。。。」
私は誰に言うでもなく一人涙声でつぶやくと家へ入りました。


練習により夜遅く帰る事が多くなりました。
父と母が居間に私を呼び出しました。
年頃の女子高生の夜遊びを心配しての家族会議でした。
他の家に比べ我が家はフランクな方ですが、やはりこう頻繁では気になるのでしょう。
でも悪い事はしてませんですわ。
私は包み隠すことなくありのままを話しました。

「そんなら、なんだぁ?そのバンド練習。ウチでやってもらえばいいじゃないか?」

「あら!そうね!蔵の奥の納戸のお部屋、あそこ空いてるもの!」

父の言葉に母が同調します。

「でも凄っっごい!大きな音するんですのよ?大丈夫かしら?」

「大丈夫よ。こんな田舎よ。」

「あぁ、せいぜい迷惑掛かるとしても、隣の(とはいえ1.2km先)岡本さんちの鶏が卵産まなくなったっちゅう程度だぁ!」

「・・・ホントに・・良いのね?」

私の確認に父も母も「ウンウンウン!」と大きく頷きました。
ニヤリ。。
承諾得ましたわ。


バンドメンバーにその旨を伝えました。
ギターの誠二さんだけが「なんでだよぅ・・・」と渋ったのみ。

「あいつお坊ちゃまのボンボンだしなぁ。。お金の苦労知らねえんだよ。」
と省吾さんアンプを運びます。

「こんな良い場所あるなんて、信子助かるわぁ!」
チンドン屋のようにバスドラを抱え、納戸の掃除に取りかかる三太さん。

使われなくなった埃っぽい納戸が、みるみる練習スタジオに変身します。
「ヘタクソ!」という烙印を押された私でしたが、役に立てた事を素直に喜びました。
気になったのか、母が御茶菓子を持ってきました。
「おじゃましまぁ~っす!」と礼儀正しく声揃え挨拶したメンバーの顔を見るなり、血相を変えて姿を消しました。
「お父さぁん!大変!」という声が母屋で聞こえます。
何か大変な事が起きたのでしょうか?
まぁいいですわ。
さぁ、私に感謝なさい!
そして今度こそ、心おきなく練習に勤しみましょう!

「1!2!3!フォー!」
ですわ!


その昔、私の住む田舎では「鬼伝説」と呼ばれるものがありました。
夜中に吹き抜ける野分(のわき)と呼ばれる突風がやまびことなり、鬼の声に聞こえるというもの。
夜中に鬼が外を徘徊するという伝説です。

再び「鬼伝説」が村の老人の間で話題になったのは練習を開始した日からでした。
夜に鬼の叫び声が轟と相成り聞こえるとの噂。
そして岡本さんちの鶏どころか、5km先の養鶏所の鶏が卵を産まなくなり、期待されていた牛舎の子牛が死産したのもその日からでした。








  

2009年11月07日

ロリィタs Not Dead!! 9話




「だから省吾はおねえさんに逆らえないのよぅ。」

自動販売機がガタゴトンと音を立てて赤いコカコーラを排出します。
それを拾いあげドラムの三太さんは、帰りの道すがら話してくださいました。
アイスクリームを持った子供が向こうから走って来ます。
ロリィタにとっての天敵です!
私は壁に張り付くようにして回避しました。

「事故なんだからしょうがないじゃない!そう思わない?ねぇ!!」


今から2年前、海外の有名ブランド会社にデザイナーとして採用されたおししょー様。
実力は世界的な注目だったそうです。
イタリアへ向かうその日、おししょー様を空港まで送るバイクが転倒事故を起こしました。
運転手は当時暴走族だった弟の省吾さん。
本人は無傷で済んだのですが、おししょー様は・・・。
お医者様からも再起不能と宣告され、歩くことを断念されたのです。
不思議な予知能力が身についたのはそれからだと言います。
結果、おししょー様はそのデザイナーの道をも断念。
そして今に至るという話でした。

「省吾は未だに悔やんでいるわ。そして自分を責めてるの。」

「でも、それって・・・」

言いかけた言葉を飲み込みました。
夕暮れの居酒屋のシャッターが開き、眠そうに出てきたオバサンが私たちに驚きます。
違法駐車の乗用車に向けて、バスは低い音でクラクションを鳴らします。

私は自分がバンドに参加することに疑問を感じてしまいました。
誰も望むことなく私は場違いな場所にいるのです。
それは「さだめ」だと諦めるような呪縛です。

「そうだ!ところで今日聞いたサウンドはどうだった!?」

「ヘッ?・・・サウンド?」

「んん~!だぁからバンドの音よぅ!!」

三太さんは私の答えに期待するかのようにワクワクと尋ねました。


今日は顔見せと同時にバンド演奏を聞かせてもらったのです。
「聞かせてもらった」・・と言うより「聞かされた」という方が良いでしょう。。
客が誰もいないライブハウスの店内。
始めて見る生のバンド演奏でしたからワクワクワクでしたわ!
それぞれ楽器を手にしたみなさんは、それぞれに様になっています。
誠二さんは念入りにギターの糸巻きをいじくり、省吾さんはアンプの調整に余念がありません。
「おぉ~~う!」
やはり顔つきが変わるもんですねぇ。
特に三太さんは2重人格と思えるほど!
さながら試合前の無口なプロレスラーです。
あっ、始まるようですわ!
スティックがカウントを刻みます。
「1!2!3!フォー!」

「$!!☆G/`##:**@!!%#!??!」

ああああああーー・・・
あのCDは音が悪いとかっていう次元ではなかったのですね!?
あのスピーカーのアブラゼミの音そのまんまですぅ~~!
爆撃ですわ!
超爆音です!
緊急避難しないと危険です!
鼓膜が震えます、それと同時に強烈な目眩が襲います。
そうですわ!聞いた事がありますわ。
人には三半規管というものが耳の奥にあり、それが損傷すると真っ直ぐに立つ事も不可能になると。
泳ぎが得意な人が溺れるのも三半規管に・・・ってそんなこと言ってる場合じゃありません!

耳を塞ぐのは失礼です。
人として演奏者に失礼です。
でもこれは非常事態ですから御勘弁ください!
あああ!ハリネズミ&キツネがうずくまる私に怒鳴ってます!
「聞けっ!」っちゅうことですかぁ!?
なんて殺生な!!?
早く!早くぅ!演奏を終了してくださいぃい~~~!



「ねえぇえええ~~?どうだったのよぅ?私たちのバンドぉ!?」

「え・・え~~~、あぁ。。。その」

三太さんのワクワクワクに私はどんな答えを出せば良いのでしょうか?
口ごもるしか回避する方法が見つかりません。
パンクロックは人を殺傷する能力を持っている事は理解いたしました。
マズイ状況に私は追いやられていることも。

口ごもりモジモジモジとスカートを触ります。
指先に「ヌルッ&ヒヤッ」とした感触。

「あぁ~~~~!!!!」

さっきすれ違った子供のアイスクリームに違いありません。
だってチョコチップでしたもの!

「そんな広いスカート履いてるからよぅ~!」

三太さんが慰める口ぶりで笑い、ハンカチを差し出しました。
私の悩みはバンドの行末より、スカートにへばりついたチョコチップアイスにすりかわり、三太さんのハンカチが「人魚姫アリエル」だったことに不思議な感覚を覚えていました。







  

2009年10月31日

ロリィタs Not Dead!! 8話



日の光の届かぬ地下室のお店。
壁にはイギリスの国旗が貼り付けられています。
それと並んで貼られているのはアンディウォーホールのリトグラフ。
しかも「マリリンモンロー」とは!?

テーマのはっきりしないお店ですこと。
アメリカなのかイギリスなのかはっきりさせるべきだと思うのですよ。
ゲゲッ!!?
良く見ればカウンターに転がるはロシア土産の「マトリョーシカ」 !
さっぱり訳がわかりませんわ。

「おい!聞いてんのかよ!?」

ハッ!?
省吾さんの怒鳴る声で私はプチ世界旅行から帰還いたしました。
今日の省吾さんは短髪を逆立てツンツクツンツン。
さながらハリネズミの戦闘モードです。


とある地下のライブハウス。
店主のはからいという事で営業前、誰もいない店内。
私はバンドメンバーとの顔合わせという事で呼び出されたのです。
良いのでしょうか?
イヤ!
決して良いはずありません!!
見知らぬ男女がこのような如何わしく、しかもデタラメな無国籍な地で!

「おい?・・ほんとにこいつで大丈夫なのかよ?」

そう発言したのは彼の幼馴染であり、バンドのギタリスト誠二さん。
後ろから見ると女子と見間違えるほどの長髪サラサラサラ。
そのサラサラサラを指でたくしあげ言います。

「なーんかね。。経験ないんでしょ?バンド?」

私を見て薄く笑うと、グラスに注いだ洋酒をカランと鳴らし、一口。
なんて嫌みな奴(怒)!!
尖った口元はどことなく「キツネ」か「スネオ」を連想させます。

「姉ちゃんがさ・・見つかったんだ。。」

省吾さんのその言葉に、サラサラ嫌味男はグラスを降ろし驚きの表情を見せました。

「・・・マジかよ・・」

「あぁ・・隣町にいた。店出してた。」

「・・・!じゃあまさか、七海さんが・・言ったのか!こいつをボーカルって!」

「・・・言った。。」

サラサラ嫌味男はもう一度「マジかよ?」と呟くと私を睨みました。

アラ?
なにやら納得されたような・・?
なんですか?お二人のその「しょうがねえなぁ」的な感じは?

「おししょー様のお言葉はそんなに絶対なんですか?」

「。。。。。」

困りましたわ。
二人ともうなだれて黙ってしまいました。

「それよりアンタ。いつもそのゴスロリなわけ?」

あっ!
コスプレじゃなくゴスロリって言ってくれた!
このサラサラ嫌味男、常識はあるようですわね。
「嫌味」を取って「サラサラ男」に昇格してしんぜましょう。

「もちろんですわ。私のポリシーですもの。」

シルバーのエクステで飾った髪を私は指で靡かせます。
そんな折。

ハッ!地震?
いえ、違いますわ。
階段を誰か降りてまいりました。
明らかに体格の良さそうなドスドスドスが地下室に響きます。

「ゴッメ~~ン、遅れちった!!」

「!!!」

C調なオカマ言葉で現れたのは2mはあろうかという大男。
ニワトリです。
頭がニワトリのトサカです。
そのトサカはレインボーです。
鼻にリングがぶら下がってます。
怖いですぅ~~!
ギャ!
目が合った!

「あ~~ら?この子?新しいボーカルぅ?」

「は・・はじめまして」と言い終わらんや否や

「よろしくぅ~!ドラムの三太でーす!」

手加減なしの握手にか弱い乙女に手のひらは握りつぶされてました。


ハリネズミ、キツネ、ニワトリを連れて、私は鬼退治にでもいくのでしょうか?
それとも向かうは天竺?
教えて!
おししょー様ぁ!!












  

2009年10月30日

第6回まちはびっくり箱だぁ!







皆さん、こんばんは。
「croll」ことクロールです。

「ロリィタs Not Dead!!」、いつも御愛読いただき誠にありがとうございます。
まだ読んだことない方は、これを良い機会に覗いてみてくださいませ。
物語を中座する形で申し訳ございませんが、宣伝させていただきます。


明日31日と明後日11月1日、私がお手伝いいたしてます「まちはびっくり箱だぁ!」という団体のイベントがございます。
場所は浜松ザザシティ及びモール街周辺。
時間は両日とも10時~20時。
「猫カフェ」「車へペイント」「展示、物販」等々盛りだくさんの内容で、私があれやこれや言うのもアレですんで。

■「第6回まちはびっくり箱だぁ!」 公式ブログ
http://machibiku6.hamazo.tv/


こちらをご覧ください。

淡白な宣伝で申し訳ございません。
それでは引き続き「ネット小説works」連載ちうの「ロリィタs Not Dead!!」、お楽しみくださいませ。



  

Posted by c roll at 20:03Comments(0)TrackBack(0)びっくり箱

2009年10月24日

ロリィタs Not Dead!! 7話




Q:パンクロックとは?

A:1970年中頃にイギリスを中心にムーブメントとなった破壊的、左翼的、反社会的なロックのスタイル。ロンドンのキングス・ロードで、小さなブティック『SEX』を経営していたマルコム・マクラーレンが店の常連を集めて結成した4人組バンド「Sex Pistols」が原形とされている。



・・・
フ~~ン。。
あぁ、そうなんですか。
そうであらせられますか。
ネットにて一通り調査完了です。

さてさてさてと。
そうですわ!
パニエにアイロンかけなければなりませぬわ。
洗いっぱなしではゴワゴワゴワになって美しくありませんもの。
折り目にあわせてキッチリとアイロンをかける事によって、パニエは長持ちフンワリしてくれるのです。
ロリィタ必至アイテムですから、大事にしなければなりませぬ。

保温状態のアイロンからショボショボと湯気が立ち上ります。
フムフム。。
パンクロックですか・・

「破壊的」ってのはある意味、良い事ですわね。
何事も前衛的であって芸術は誕生するのですから。
かの有名画家ルノワールさえも、当時は祖国フランスにて「な~んてお下劣な!!」と描く裸婦を批難されたとも聞きますわ。
そういった偏見を乗り越えてこそ!です。
しかし・・・
この「SEX」というブティックと言い、なんですか「セックスピストルズ」・・ですか?
乙女にとっては少々刺激が強すぎるお名前ですこと。

あら?
このマルコム・マクラーレンさんと一緒にお店やってたお方、ヴィヴィアン・ウエストウッドさんとは?
・・・って!
あの王冠のマークの革命的ブランド「Vivienne Westwood」ではありませんか!!?
あのロッキンホース・シューズ!
ロリィタとしては是非とも欲しいアイテムでございます!
しかし高いのです。
あぁ、どーいった巡り合わせなんでしょう。。

なるほど。。
そういう革命的なお歌を私が歌うわけでございますね。
それでおししょー様のドレスが手に入るのでしたら、「例え火の中水の中」です!
そういえば省吾さんからCDを頂いてましたわ。
ひっそりとカバンに入れてそのままでした。
フム。。
これにその前衛的な「パンク」という音楽が入っているのですね。
聞いてみましょう。
ポチッと。。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

アラ?・・・
夏はまだだというのに、どこからかアブラゼミが入ってきたのでしょうか?
窓は・・・?閉まってますわね。。
スピーカーにとまっているのかしら?
あら、いないですわね。
変ですわね?
不思議現象です。
まさか!とは思いますが念のため。。
ハッ!??
ボリュームを下げるとアブラゼミの鳴き声も小さくなるということは。。
・・・・・

これは・・音楽?
・・・・

よくよく聞けば、落雷のようなドラム、歪んだギター、ベース、歌なんて歌詞が全く聴き取れず「ガーーーー!」言ってるだけです。
困ったものですわ。
新たに聞きやすい演奏を録音してもらわなければなりませんね、これは。


あら?
なんか焦げくさいですわね?
あー!!アイロン!!
パニコットパニエが大変な事に!!
大ショックです。
このギャンギャンギャンギャンいう音楽がいけないんですわ!
幸先悪いといいましょうか、先が思いやられるといいましょうか・・・

そうなのです。
私は省吾さんのパンクバンドへボーカリストとして加入したのです。
それによって、おししょー様のドレスを手に入れる事ができるのです。


私は穴の開いたパニエを抱え、まるっきり見えぬj明日に胸をときめかせるのでした。

  

2009年10月17日

ロリィタs Not Dead!! 6話



・・・
ソワソワ。。
全くもって落ち着きませんわ。。
何が落ち着かないかって、この沈黙。
積もる話はありそうなものなのに。
。。。。
2年ぶりの再会という姉と弟なのに、かわした言葉は

「元気そうだな。」(by弟)
「ええ。。。」(by姉)

これっきりでございますよ。
よりによって店内に流れるはショパンのピアノソナタ。
空気が棘のようです。
間に挟まれた私は如何したらよろしいでしょうか?
とりあえずと言っては何ですが、紅茶を淹れて二人の元に運びました。

曲線の足の小さなテーブルに二人は向き合っています。
おししょー様はぼんやりと視線を外に。
僅かに差し込む光が右頬の後ら辺に当たって、西洋人形のような白い肌を紅く染めています。
彼はというと、足を投げ出しだらしなく椅子に腰かけ、ゆっくりと店内を見回しています。

「紅茶。。置いたら如何?」

「あっ・・ハイ?」

ぼんやりしていたのは私もでした。
おししょー様に促され、私はテーブルに紅茶セットを置きます。
おっと!
彼がようやく口を開きました。

「・・いつからここに居たんだよ?」

少し考えるふりをして、おししょー様が答えます。

「・・1年とちょっと前かしら?」

「家には?」

「帰ってないわ。。もう随分。。」

「まぁ、、居場所分かってよかったよ。」

「。。。。」

「未来は?」

「まだ見えるわ。。今日、あなたが来る事も。」

「・・・やっかいだな。」

「もう慣れたわ。。」


あぁ。。
又沈黙が夏の夕立の如くやってまいりました。。。
外野の私がヤキモキ&オドオドオドとしてしまいますわ。
部外者といえどもここは一つ私が何とかしなければ!と要らぬ思いが入道雲の如くモクモクモクと湧きだしてしまいました。
もう耐えられません!

「そうそう!省吾さんのお洋服、私ビックリしてしまいましたわ!」

無駄に明るく私は会話を切り出しました。
あっ、お二人ともこっちジッと見てる。。。
っていうか、省吾さんは睨んでると言ったほうが・・・

「相変わらずバンド、やってるの?」

おししょー様が紅茶を口に運び、興味なさげにポツリと言いました。

「あぁ。」

「えっ、省吾さん、バンドやられてるんですか?なんの楽器を?」

いけないとは思いつつ、私は二人の会話に突入です。
頑張れ!信子!!
少しはこの場を盛り上げなければ。
それが今の私の使命ですわ!

「ベースだよ。」

「あぁ・・ベースですか。。あのボンボン鳴ってるのですね。。」

いけない!
彼の左右の眉が怒りを示してます。
明らかに不機嫌そうな顔で私を見てますわ。
何故にベース?
せめてギターとでも言ってくれれば、「あら?カッチョイイですわね!」なんて言う事も可能だったのに。。

おししょー様はそんな私のあたふた振りを「クスッ」と笑います。
そして省吾さんの服を見て、ポツリと言いました。

「それ、Vivienne Westwood ね。。高かったでしょ?」

「ちゃんと働いて買ったんだよ。言っとくけど親父のお金じゃねえ。」

「分かってるわ。」

「まぁ・・今バンドは活動停止だけどな。」

その一言を聞くと、おししょー様が動きました。
車椅子をカラカラカラと滑らせ、店のカウンターから私たちを眺めるように。
私は省吾さんの椅子の後ろで立っていました。

「ボーカルが・・いないのかしら?」

おししょー様は時折こうした予言をします。
そんな姉との会話を心得ているのは、やはり姉弟だからでしょうか。
なにやらハッ!と気づいた様子でドモリながら言うのです。

「おい、ねーちゃん!まさか・・・!」

春の木漏れ日のようなおししょー様の微笑みが私に向けられます。

「・・・ハイ?・・えっ・・?」

慌てる省吾さんと柔らかい微笑みのおししょー様。
意味が分かりません。
私に何をなされと?
おししょー様がおっしゃいました。

「新作のドレスが出来るわ。」

「!本当ですか!!」

「しかも省吾が買ってくれるわ。ラッキーね。」

「おい!本気かよ!?」

たまらず省吾さんが口を挟みます。

「俺、こいつの歌聞いたけど、とんでもないんだぜ!」

(怒)!!
あの日のマイ山のことでしょう。
歌ったと言ってもほんのワンフレーズ。
「飲んでェ~飲んでェ~♪」のサビ前のまだ本調子じゃない状態でしたわ!
全く失礼な・・・

えっ?
歌?
何?
どういうこと??

「ドレスは省吾が買ってくれるわ。でも条件があるの。。」

省吾さんは「おい!一体いくらすんだよ!」と投げ捨てるように言って私を睨むのでした。
















  

2009年10月10日

ロリィタs Not Dead!! 5話




田舎モンの私は「ナボコフ」への道を説明する事が出来ません。
目印となるビルや建物、全く馴染みのないものですから。。
そんなこんなで結局、おししょー様の弟と名乗り、「省吾」というチビ男子と「ナボコフ」へ行くこととしたのです。
予定時刻のバスを降りると彼はバス停で待っておりました。
しかし。
その服装たるや!!

一瞬皮製と思われたパンツは光沢を持ったゴム生地。
ラメ入りTシャツには斬り裂かれたような穴があいておりますわ。
男子故、お裁縫ができないのでしょうか?
安全ピン使って所々、繋ぎ合せているではありませんか。
人体の「首」と呼ばれるあらゆる「首」に鋲のついたバンド。
そして歩くとどこかしらで
「チャラチャラチャラチャラチャラ」
と音のするほどのチェーンをふんだんにぶら下げております。

・・・・
この人は「犬」かなにかになりたかったんでしょうか?
そう言えば私の住む場所では、熊が出る時期に山に入って行くこういったおじさまが居りましたわね。
しかもチビですし(注:信子=175cm+ヒール12cm)。
一緒に歩くのも恥ずかしいですわ。。

「その服装・・何とかならないのですか?」

尋ねた私に彼は仰天して答えました。

「!?お前に言われたかないよ!バス降りたとき、でっかいクラゲかと思ったぜ。」

なんですと!?
おそらく私のスカートの事をおっしゃってるのでしょう。
パニエでふんわりさせたスカートは、確かに占用許可がいるほど歩道のスペースを確保してしまいます。

「一体何詰まってるんだよ?そのスカート。」

「あら、この中には憧れと希望が詰まってますのよ。」

「・・・フン、どうせでっかいケツが詰まってるんだろ。。」

(怒)!!
なんて失礼な奴でしょう!?
それでもおししょー様の弟様ですわ。
それなりに聞きたい事もあります。

「ところでおししょー様はおいくつなんですか?」

「?あぁ、ねーちゃん?俺より4つ上だから23か?」

「えっ!?・・・・・っていうと、あなた私より年上ですの?」

「19だよ。」

なんと!
あらあら、なんということでしょう?
とても見えません。
憐みの眼差しで私は彼の頭をナデナデナデとしてしまいました。
彼は「なんだよ!ヤメロヨ!」とか言って私の手を振り払いました。


道すがら、私はおししょー様の事をいろいろと聞きだしました。
ここではない港町で生まれ、お父様は海を渡る冒険家だったこと。
幼少から色白で、常に日傘を手放さなかったってこと。
裁縫好きなお母様の影響で服を作るようになったこと。
まだまだ知りたい事は沢山あります。
浮かれポンチな私はしきりに
「ネェネェネェネェネェ」
と彼に疑問、質問を浴びせました。
ウンザリする顔を見せていた彼が、急に怒鳴りました。

「うっせえなぁ!どうせねーちゃんの足のこと聞きたいんだろ!?」

「!」

「。。俺のせいなんだよ。全部。。」

なんということでしょう。。
聞きたくないといえばウソになりますが、そんなつもりで聞いてたのではありません。
「何故、おししょー様は車椅子なんですか?」
なんて、どうして聞けましょう?
そして大きな罪を嘆くような顔をした彼がいました。

私は立ちどまり、黙ってしまいました。
彼は今まで以上に「チャラチャラチャラ」をけたたましく鳴らし、足早に歩きました。
そして急に立ちどまって振り返り、私に言いました。

「。。こっからどう行くんだよ?ちゃんと案内しろよ。。」

申し訳なさそうなその顔を見て、私は駆け足で彼に追いつきました。


きっとおししょー様は驚くに違いありません。
私はワクワクしていました。
いつも人形のような無表情のおししょー様。
会う事の出来なかった弟との感動の再会!
あぁ。。
突然の出来事にビックリしない訳ありません。

「キィ」という音を立てて店の扉が開かれます。
いつも店舗にいないはずのおししょー様が、今日は待ち構えていました。
テーブルに3人分のお菓子を用意して。

「久しぶりね。省吾。。」

・・・
あぁ、やはり彼女は魔女に違いありません。






  

2009年10月03日

ロリィタs Not Dead!! 4話




ガタゴト道ですので砂埃がひどいですわ。
箱詰めされた酒瓶がぶつかり合い、カチカチカチと音を立ててます。
父の軽トラックの荷台。
そこは私の指定席です。
私はその荷物と同化して、隅っこで日傘をさして小さく座っていました。

散々な1日でした。

家に着き、父から報酬を受け取ると私は部屋に戻りました。
フゥ・・・
「Champion」のジャージ(上下)に着替えた私は大きくため息をつきました。

全く!!
乙女のスカートを捲るとはなんという重罪!
きっとあの男子は村の若い衆によって「引き回しの刑」となったことでしょう。
例え罰をもって罪を償えども、乙女の清らかな心は傷ついたままであります。
そんな苛立ちのおさまらない乙女は、マイ山へ登るのでありました。



ここへやってくるのも久しぶりでございます。
「ロリィタ」となる以前、私は嫌な事があるとこの山の中腹で喚き散らしたものでした。
叫び暴れまわり、辺りの雑草はなぎ倒され、半径3m程は広場となったものでした。
ロリィタとして生まれ変わり、利用することもなくなったその場所は今や、新しい緑に覆われていました。

事故と思えば良いものの、それでは収まらない気持ちを私は叫びます。

「バッッッツキャヤロォ~~オ~~~!」

と。

新しく生えた雑草を、さながら刈り取るかの如くバタバタバタと暴れまわります。
不格好なミステリーサークルがあっという間に完成です。
うむ。。
多少なりとも気はおさまりましたわ。
ついでと言ってはなんですが、歌でも歌ってみましょうかしら?
こんな日の曲目は「酒と泪と男と女」。
「ラブイズオーバー」に次ぐ、こっそりお気に入りの一曲であります。

「忘れてぇ~しまいたいぃ~事やぁあ~~♪」

「!!」

ガサッという物音がしました。
まだ、ワンフレーズ目だというのに。
いや、この際歌った時間など関係ございませんわ。
野兎?猪?何?
すると夕闇に人の影。
誰?
今日の物産店でのあのエロ男子が立っていました。

「!!!」

まずいですわ!
完全ヤバい状況です。
ここまでついてきたのでしょうか?
膝が自然に震えます。
こんな場所では助けを呼ぶこともできません。
辺りに武器になりそうなものを探せど、先ほど私が綺麗に踏み荒らした後、そうそう見つかるものではありません。
男子はうすら笑いを浮かべ、近づいてきます。

「あの・・さっきは悪かったな。。」

落ち着いた雰囲気で男子は話しかけてきました。

アラ?何故でしょうか?
男子の一言で喉を詰まらせていた危機感がフッと薄れていきます。
その表情はどこかしら懐かしく、そして馴染みのあるような。。?
悪い人ではなさそうですわ。
でも油断してはなりませぬ!
深呼吸して私は尋ねます。

「・・なんですの?ついて・・きたのですか?」

「お店の酒蔵行けば逢えると思って。そしたら山を登ってくあんたを見かけて。。」

なんとまぁ!
全て見られていたのですね!
私の叫びも、ミステリーサークルも、河島英五も!
恥ずかしくて死んでしまいたい。。。
枝っぷりの良い樹にロープを掛ける日ですわ!!

「ゴメン。。どうしても聞きたい事があって。」

「はぁ・・・?」

「さっきの服だけどさ、どこで買った?」

「?」

彼はあの服をお気に召したのでしょうか?
でも残念な事に「ナボコフforMENS」などはございません。

ハッ!!?
それとも単なる女装好き?
ロリィタになりたい乙女のハートを持った男子なのでしょうか?
確かに整った顔立ち、そしてちっこい身長は私より似合うかも知れませんわ。
妄想の中、返事のない私に彼は改まって尋ねました。

「あの服、七海っていう人が作ってるんだろ?」

「エッ!!」

驚きでした。
この人おししょー様を知っている!

「あなた!おししょー様の何ですの?」

「おししょー様?」

「七海さんのことですわ。」

このチビエロ男子はおししょー様の事を知っている。
あの謎のベールに包まれた魔女の事を。

「俺の・・姉さんだよ。ずっと行くえ知れずだった・・・」

彼はぼそっと呟いたのでした。









  

2009年09月26日

ロリィタs Not Dead!! 3話




「暑いですわ。。。。。」

梅雨前だというのに容赦ない酷暑の日でした。

物産展の行われている公民館には多くの人が集まっています。
その駐車場に連ねられたテントのブース。
ノボリをはためかせる風すら吹きません。
誰もが地区のハッピやらを着て、地場産品、野菜、もしくはクルクルウインナーや焼きそばを威勢良い掛け声も高らかに販売しています。
そんな中、酒蔵のブースは確かに「異様」だったことでしょう。
長テーブルにチェックのビニルクロスを被せたカウンターに、我が家である蔵の日本酒「露利」が並んでいます。
そして売り子は全身白黒ロリィタで身を固めた私。

リボン付きの黒フリルベアトップ、ピンストライプのリボンスカート、頭にはフロントに被せたミニハットとリボンコサージュ。
ベアトップに合わせてUネックのフリルブラウスにしたのですが、この暑さは想定外でした。
脇の下あたりが、もう大変な事となっておりますわ。
そしてせめてパニエの下のドロワーズだけは止めておけばよかったと後悔しておりました。
ちなみに母はこのパニエ下に履くこのドロワーズをなぜか「ズロース」と呼びます。

「ぃらっしゃいませぇ~~。。銘酒露利限定セットでございまぁ~あ~~すぅ~~。。」

「限定でございますぅ~~う~~。」

「銘酒露利のぉ~~・・・ですぅ~~。。」

フゥ。。。
お金を頂くバイトですからそれなりに頑張らねばです。
ちゃんと頑張って「生き銭」を手にしなければです。
しかしですね、実際問題・・・・ダレてしまいます。
試飲される方もまばら、そこそこしか売れていません。

「おや?ここはメイドさんが売ってるのかい?」

「(怒)メイドじゃありません!!」

しまった!!
又やっちまいましたわ。。
折角のお客さんが怯えて帰ってしまいました。
でもアッチが悪いんですわ、「メイド」だなんて!
「メイド」「コスプレ」などと一緒にされるのは、ロリィタにとって最大の屈辱。
オヤジは全くもって知識が足りません!
プンスカプン!

あら?
向かいの地ビールブースは繁盛してるではありませんか?
長~~い行列が羨ましいです。
そりゃこの暑さですからね。
ビールはさぞかし美味しいことでしょう。
あっ!
売り子がこっち見てにやにやと笑っているではありませんか!?
キィ~~~(怒)!

「??」

何でしょう?
ビールブースの列からこっちを凝視してる人が?
気のせいかしら?いや、明らかに私を見てますわ。
背の低い若い男性です。
未成年じゃないのかしら?
かなりのベビーフェイスですわ。
笑ってるわけでもなく、やけに真剣な眼差しです。
あっ!列を離れた!
ズンズンズンズン!とこっちに来ますわ!
今まで奇異な目で見られる事は多かったですが、なにやら雰囲気が違います。
新手の変態でしょうか?
いや!いけませんわ!そんな偏見は!
そうですわ、きっと「やっぱビールより日本酒がいいや!」と心改めたお客様ですわ。
あぁ、もう目の前にいます。。
ちょっと恐いですぅ~~~。。。

「い・いぃ~らっしゃいませぅ~~。。(1部ファルセット)」

「おい!」

「(ヒッ)!!な・・なんでしょうか?」

「ちょっとその服見せてくれないか。」

「ヘッ?」

「いいから!」

強制的な物言いにビックリした私はブースの前へ。
ダメージ系のTシャツにジーンズ、革のジャンバーを羽織った学生っぽい男の子です。
よく見てもやはり、年下と思わせるベビーフェイスです。
癪でございます!
なんでしょう。その強引な口ぶりは!
彼は私のお洋服を隅々まで見ています。
そんな私の奥底の怒りにも関らず、おもむろにその男子は私のスカートをめくったのであります。

「!!キャ~~~!!!!!!!」

さすがの私も突然の出来事に声を上げました。
なんたる破廉恥な!!
その声に周りの若い衆が集まりました。

「おい!お前!何やってんだ!!」

「いや!違うんです!あの!」

全てを言うや否や、男子は男たちに追いだされてしまいました。

「おい!お前のその服・・・・・」

連行される際、男子は私を指差し叫んでいました。
とりあえずドロワーズのおかげでパンチラを免れたことを安心しながら、私はその様子をただただ茫然と見ていました。